西伊豆土肥桜ウォ-キング
2月3日朝、15名のメンバがマイクロバスに乗車して、厚木市を出発。日本一早咲きの桜「土肥桜」の花訪ねて、伊豆市土肥温泉に向かった。土肥桜は、早咲き桜として知られる河津桜の原木発見の3年後の1958年に、西伊豆の土肥山中で早咲き桜の原木が発見され、以後、接ぎ木で苗木を増やし、土肥地区内に植樹して、地道に生育に努め、2004年に土肥桜として品種登録を済ませ、400本まで増やした土肥桜が成木までに成長した2016年から、土肥桜祭りを開催するようになった。日本一早咲きの桜として、デビュ-して、今年で8年目のニュ-フェイス。知名度もまだまだ低い上、土肥地区門外不出の桜として、地元で大事に育てられてきたレアな桜だ。なお、土肥桜とほぼ同時期に咲く熱海桜が知られているが、明治初期にイタリア人の商人が、インドから日本に持ち込んだ外来種の早咲き桜である。
土肥桜の存在を知った3年前から、厳寒の1月中旬ごろには、見頃を迎える、日本一早咲きの在来種の桜に、是非見参したいとの思いを強くし、花見ウォ-キングを計画したが、コロナ禍に阻まれて、2年連続しての中止の憂き目に遭い、「三度目の正直」となる今回、ようやく念願がかなうことになった。
計画書
実施報告
土肥地区に近づくと、川沿いに濃紅の花を満載した土肥桜が目立つようになった。最初に訪れた土肥神社は、延喜式内神社として、1200年以上の歴史がある伊豆国有数の格式ある神社。本日午後から始まる節分祭の準備に大勢の氏子が集まって、にぎやかな中での参拝になった。境内に満開の花を咲かせる4本の土肥桜を間近で初見参する13名のメンバから、きれい!との歓声があがった。
花時計や多種類の早咲き桜が植樹されている松原公園内の市営駐車場にマイクロバスを留めた。地元観光協会の話によると、寒さが厳しい日々が続いたせいで、土肥桜の見頃の時期が、例年より1週間ほど遅れたそうだが、濃紅色の土肥桜はほぼ満開。淡紅色の土肥桜は5~6分咲まで開花が進んでいた。例年2月上旬には開花している松原公園の河津桜はまだ固いつぼみで、こちらの開花は、大幅に遅れているようだ。
我々一行は、海辺を北に進み、土肥温泉に度々逗留して、多くに短歌を残した若山牧水の石像や歌碑、漁協前に続く土肥桜並木、万福寺境内では優雅に曲がった古木の枝に満開の花を咲かせた土肥桜を愛で、温泉街を一回りして、約1時間の土肥温泉街のウォ-キングを楽しんだ。途中、「花より団子」とばかり、古民家ベーカリ-で焼き立てのバンを、八百屋で地元産のかんきつ類を、野菜直売所では、地元産の新鮮野菜や春みかんを大量に買い込むメンバが目立った。
この後、土肥金山前の広場に移動して、昼食タイムとした。屋外のベンチと休憩卓を用意したが、風が冷たく、半数以上のメンバはバス車内で食事をとる羽目になった。
この土肥金山は、江戸時代~明治初期まで、盛んに金銀が掘り出され、佐渡に次ぐ産出量を誇る大金鉱山だったそうだが、現在は、金鉱山遺構として坑道の一部を有料公開するとともに、資料館に世界最大とギネスブックに認定されている250Kg純金インゴット(時価約20億円)が展示されている。また、土肥金山有料施設内の中庭と駐車場外縁に40~50本の土肥桜が植栽されており、桜まつり期間中は夜間ライトアップされ、無料開放されているようだ。
次に向かったのは、1958年に発見された土肥桜の原木が移植され、大切に育てられている丸山スポ-ツ公園。さすが原木。樹齢100年近く経つのだろうか?幹回り、樹高、枝の広がり、密度の高い花付き、のいずれにおいても、威風堂々たる姿に感動した。近くには、原木の枝を接木で増やした土肥桜が数10本植栽されているが、原木と同じ濃紅色の花を咲かせる桜と、後年、土肥桜として追加登録された淡紅色の桜の2種類の土肥桜があることに気づく。これら2系統の桜の違いを詳細に観察してみると、花色の違い以外に、原木と同じ花を咲かせる濃紅色系は、花弁の紅色が濃くて、花柄が長いため、花は下向きに咲き、父親のカンヒザクラの花姿に似ており、1月初旬頃から開花が始まる。それに対し、淡紅色系は、花柄が短くて上向きに咲き、花姿が河津桜に近く、しかも、開花時期が、濃紅色系より一般に遅い。同じ土肥桜原木の枝の挿し木苗から、2系統の土肥桜が本当に誕生したのかどうか?その謎はいまだ解明されていないようだ。早咲き桜のDNAを調べた研究論文によると、濃紅色系の土肥桜からは、カンヒザクラとヤマザクラのDNAが多く検出され、淡紅色系土肥桜からはカンヒザクラとオオシマザクラのDNAが多く検出されているという。ちなみに、河津桜は、カンヒザクラとオオシマザクラの自然交配種と同定されている。
続いて、恋人岬の土肥桜並木が見頃を迎えているとの情報を得て、この地を訪ねた。I Love Youのハンドサインのオブジェのある恋人岬入口駐車場下に、眼下に駿河湾が見渡たせる南西斜面に広がる土肥特産の白びわ果樹園内に続く、作業道を下ってゆくと、道の両側に濃紅色と淡紅色の2種類の土肥桜が大きく成長し、見事な桜のトンネルを作っていた。折しも、金襴緞子の花嫁衣装と羽織袴姿の新婚カップルが、桜のトンネルの下で、しきりに写真を撮影している現場に遭遇。TTCメンバ全員揃って、「オメデト-」のコールをして祝福した。
土肥桜巡りが終了した後、西伊豆の景観を代表する、恋人の聖地「恋人岬」と、少し南に足を延ばした夕日の絶景「黄金崎」を訪れた。両地とも、駿河湾越しに臨む、富士山と雪を戴いた南アルプスの大パノラマを楽しみにしていたのだが、この日は、あいにく曇り基調で、大展望は期待薄とあきらめかけていた。しかし、午後になると、青空が広がり、暖かい日差しが射して、傘雲を頂いた富士山や、白化粧した南アルプスの峰々が時折姿を現すまでに回復したのに元気付けられ、駿河湾に突き出した半島の先端近くの恋人岬まで、約1時間のハイキングを敢行した。
樹林帯の下り坂が終わると、急に展望が開け、最後は,急な斜面に付けられたボードウォ-クを下った先に、愛の鐘がある恋人岬展望デッキに到着する。昔、この地を何度も訪れたというメンバが何人もいたが、ボードウォ-クが新設されるなど、状況が大きく変わってしまったこともあり、現地の景観を覚えているメンバは皆無で、皆さん初めて訪れた新鮮な気持ちになって、作法通り愛の鐘を3回鳴らし、幸せな老後が送れますようにと、真剣にお祈りしていたようだ。
駿河湾の向こうに、御前崎から焼津、日本平、清水、沼津と続く、海岸線の上に、傘雲を頂いた富士山がうっすらと姿を見せていたがこの時期、いつもならば、3合目あたりまで真っ白に雪化粧した富士山が見えるはずだが、顔を見せてくれた富士山は、幾筋かの雪化粧の白線が残っているだけで、地肌が目立つ、異様な姿に驚愕してしまった。
最後に訪れた黄金崎は、風も、波もなく、暖かい午後の太陽が射す穏やかな景観。冬の黄金崎は、強い西風が吹き、岩壁に大波が打ち付けて、砕け散るダイナミックな景観が堪能できるのだが、今日は実に穏やかな黄金崎だ。メンバ全員にハッパをかけて、絶壁の上に続く小径を辿り、急峻な階段を登っての富士見の丘展望台までのハイキングを楽しんで、歩行数13,500歩の土肥桜ウォ-キングを無事終了した。