開成あじさいの里
梅雨の晴れ間の2025.6.12(木)、シニアメンバを中心とする14名が、小田急開成駅に集合し、第38回あじさい祭開催中(6/7~6/15)の開成あじさいの里を訪ね、多種多彩なアジサイの花と田園風景を楽しんだ。
計画書
実施報告

日本最大規模のあじさいの名所といえば、100種・約15万株の伊豆下田公園とされているが、神奈川県にも、人気のあじさいの名所が沢山ある。最近実施された「関東地方の人気のあじさい名所」を選ぶアンケ-ト調査によると、鎌倉長谷寺、明月院、相模原市北公園、箱根登山鉄道沿線、開成あじさいの里と、ベスト20に神奈川県から5か所が選ばれている。今回我々は、自然豊かな広大な田園地帯に約5000株のあじさいが咲く、開成あじさいの里を訪れることにした。
小田急開成駅から開成あじさいの里までは、北西方向に約2kmの距離があり、祭りの期間中はシャトルバスが運行されているが、我々は、酒匂川右岸の堤防上に続く「酒匂川青少年サイクリングロード」を歩いてあじさいの里に向かうことにした。堤防上に出ると、川幅300mほどの河原の1/3ほどに酒匂川の流れがあり、堰堤に群がって小魚を狙うカワウやシラサギ・アオサギの動きを観察し、心地よい川風に吹かれながらのウォ-キングを楽しんだ。
暴れ川として名高い酒匂川の治水に貢献した二宮金次郎が植えたとされる黒松の並木を左に見て、多くの顕彰碑や暴れ川の水流を弱めるために江戸時代から多用されてきた「聖牛」と名付けられた治水機構の展示物に見入った。「聖牛」とは多数の直径30cmほどの玉石を金網で束ね、束ねた玉石群が激しい水流で流されないよう、牛の形に組んだ丸太で川底に固定したという。また、洪水が起きやすい場所には、堤防を二重にし、内側の堤防の一部を低くして、増水時は内側の堤防から越水させ、その水を外側の堤防との間に貯水して洪水の被害を軽減させたという、武田信玄が多用した霞提も作られたという。度々氾濫した酒匂川、とくに宝永年間の富士山の大噴火の際は、大量の火山灰が堆積して、大洪水が発生するなど、その都度、治水に力を注いだ小田原藩の苦労が偲ばれる。また、「治水碑」によれば、昭和13年6月にも洪水に見舞われ、大きな被害を出したという。
河原の開けた場所に造られた開成水辺スポ-ツ公園で、トイレ休憩を兼ねて小休止したのち、新十文字橋下で、サイクリングロードから県道712号線に出て、あじさいの里に向かった。途中、下見の際目を付けておいたパン屋とJA西湘農産物直売所に立ち寄り、所望の品を仕入れた。直売所を通り抜けると、広大な水田が広がり、農道の両側には、一定間隔で植栽された色とりどりのあじさいが咲きそろい、大勢の観光客に交じって、花々を鑑賞しながらのそぞろ歩きを楽しんだ.。
やがて、仮設テントが所狭しと立ち並ぶ、メイン会場のあじさい公園に到着した。下見の際は人影薄い広場たったが、祭り期間とはいえ平日の今日も出店と大勢の観光客で大賑わいだ。ここには常設の立派な舞台を備えた建物があり、祭り期間中の週末には、阿波踊りや、吹奏楽・ジャズ演奏や種々の楽器演奏等のイベントが催され、また熱気球に乗って空から景色を眺めることもできるようだ。しかし、平日の今日の舞台には人影はなかった。公園の隅の方に,TTC14名が座れるベンチをなんとか探し当て、ランチタイムとした。
あじさい公園には、大量の水が勢いよく流れる農業用水路があり、その川水を引き込んで動力源とした水車や、用水路の中に直接水力発電用の小型タ-ビンを入れて発電する珍しい発電装置が稼働していた。また、祭り期間限定のイベントとのことだが、公園内のあじさい池には、色取り取りの花筏と約2000輪のあじさいの花が浮かび、幻想的で美しい景観に感動した。
道端に咲くあじさいの花を注意深く観察してみた。1/3は、アメリカでノリウツギを品種改良して誕生させた大輪の白花を長い期間咲かせるアナベルで、残りは古来から日本で育てられてきたガクアジサイとホンアジサイの原種に近いものから、品種改良されて誕生した多くの園芸種のように見えた。ガクアジサイやホンアジサイは、土壌の㏗がアルカリ性だと花は赤紫色に、酸性だと青色に変化することがよく知られているが、そのほかに、土壌の水分量や、肥料成分の窒素やリン酸の濃度によっても花の色が微妙に変化することが知られている。また、これらのアジサイの翌年の花芽が旧枝の特定の位置にあるため、枝の剪定位置と時季を間違うと翌年花が咲かないという。それに対し、アナベルの花芽は新枝につくことから、剪定の位置と時季に関わらず。翌年も満開の白花を咲かせ、栽培環境によって、花の色が変化することもないという。
開成あじさいの里のもう一つの特色として、「開成ブル-」と命名されたオリジナルの新品種ガクアジサイの植栽に町を挙げて力を注いでいることだ。蕾の状態では薄緑色だが、開花するとディ-プブル-の大輪のガクアジサイに変身する。
この新品種のガクアジサイは、静岡県掛川市の園芸農家で開発されたそうだが、掛川市の好意により、新種の命名権が開成町に譲渡され、開成町のオリジナル品種「開成ブル-」と命名され、町の中学校を中心に、挿し木して増産し、祭りの期間中に一般販売もしたようだ。確かに、道端に植栽されているアジサイ品種の中で、純白のアナベルの次に存在感を示していたのは、この「開成ブル-だった。
あじさいの里の見どころ立ち寄りを終え、最後の訪問先のあしがり郷瀬戸屋敷のある金井島地区に向かった。水田から畑地が増え、開成町のブランド茶「快晴茶」の茶畑や、もぎ取り体験を売りにしている白いとうもろこし「ホワイトチョコラ」の畑もあった。また、民家の庭には、まさに食べごろを迎えた琵琶の実をたわわにつけた大樹が目立った。我々の住む県央地区には、庭に琵琶の木を植えている民家は滅多にない。
入園料を払い、立派な門を潜って、開成町指定重要文化財「あしがり郷瀬戸屋敷」に入ると、立派な石庭を備えた築300年の茅葺屋根寄棟造の母屋があった。建物の中を見学すると、武家屋敷と見間違うほどの立派な客間や調度品が揃い、その奥には立派な石倉と中庭があった。なんでも神奈川県で一番大きい米蔵だそうだ。この瀬戸屋敷は、小田原藩有数の米どころであった旧金井島村で代々名主を勤めてきた瀬戸家の屋敷だそうで、立派な客間は、時折やってくる小田原藩の役人の接待場所として使用されていたという。屋敷の内外には、お休み処があり、丹沢山系の大野山にある牧場から毎日届く搾りたての牛乳から作るソフトクリ-ムが名物だといい、フレッシュな大野山牧場の牛乳の味を、みんなで美味しく味わってから帰途についた。
帰路は、往路と別ル-トで開成あじさいの里を北から南に横切り、往路に辿った県道712号線に出て、付近のバス停から路線バスで新松田駅に戻って、ここで解散とした。本日の酒匂川右岸から開成あじさいの里と瀬戸屋敷を巡るウォ-キングは、行動時間5時間強、歩行数約15,000歩の実績値をもって、無事終了した。