奥日光西ノ湖・千手ヶ原

6月4日(日)、梅雨入り前の好天を狙って、咲き始めたクリンソウを愛でようと、奥日光に残された秘境「西ノ湖」から、新緑の原生林が広がる千手ヶ原を歩き、中禅寺湖西岸の千手ヶ浜「仙人庵クリンソウ群生地」を目指した。前日、本州南岸沖を通過した台風2号の被害を心配しながら、9人のメンバが14人乗ワゴン車に乗り込んで、早朝厚木市を出発。圏央道、東北道、日光道を順調に通過し、約3時間半を要して、シャトルバスが発着する奥日光赤沼車庫に、余裕をもって到着した。 本山行は、5年前から毎年この時期に計画してきたが、悪天候や3年間続いたコロナ禍に阻まれ、ようやく5年目にして、台風一過の好天のもとで、無事実施することができた。

計画書

実施報告

中禅寺湖西岸のこの地に、2本の川が流れ込む千手ヶ浜には、中禅寺湖誕生から約2万年間に堆積した美しい白砂の湖岸が1km以上続く別天地。白砂の湖岸から望む、中禅寺湖の対岸に聳え立つ日光男体山の山姿が最も秀麗と評される日光男体山随一のビュ-ポイントから、日光二荒山神社御神体に畏敬の念を込めてご挨拶。

到着した赤沼駐車場は、予想通り、空き待ちの車が10台ほど並んでいたので、国道上で素早く下車しバス停に急いだ。車は、0.7km先の三本松駐車場で待機してもらった。早速バス停に並び、発車予定の10:05発のシャトルバスの座席に余裕をもって座れた。バス通路にまで乗客を詰め込み、何とかバス1台に乗客全員を乗せて出発した。大型バスがようやく通れる狭い道を、約25分走って、西ノ湖入口バス停で下車した。

2本の川に架かる橋を渡り、カラマツにミズナラやシラカバが混じった気持ちのよい原生林を約30分歩くと、最初の訪問地、西ノ湖に到着した。山に囲まれた周囲1.5kmの小さい湖だが、東側は湖底が露出し、湖面の面積が半分以下に縮小しているように見えた。どうやら昨日通過した台風も、この地には大量の降雨をもたらさなかったようだ。

湖畔のミズナラが作る木陰の倒木に腰掛け、目に染みる鮮やかな新緑に染まる日光白根山から錫ヶ岳~宿堂坊山~皇海山に続く、県界尾根を見上げながら、少々早いランチタイム。食後は、地元の方に教えてもらった、西ノ湖湖畔に繁るミズナラの巨木「千手楢」を見学した。奥日光を代表する3巨木の一つと称するだけあって、周囲の大木を圧倒する見事な巨樹であった。

一旦柳沢川の吊橋を渡り返し、平坦な千手ヶ原原生林の中に付けられ「千手の森遊歩道」を東に3km/1時間ほど進むと、中禅寺湖西岸の美しい白砂の浜辺が広がる千手ヶ浜に到着した。日光男体山の噴火によって湯川、外山沢川、柳沢川の流れがせき止められて、中禅寺湖が誕生した約2万年前頃の中禅寺湖は、西ノ湖付近まで湖面が広がる大湖であったという。その後約2万年の歳月を経て、外山沢川と柳沢川から流れ出た堆積物で、中禅寺湖西岸の上流部から徐々に埋められて、現在のような広大で、平坦な千手ヶ原原生林が出現したという。そのため、千手の森遊歩道は、車椅子でも通行できそうな、細かい砂混じりの平坦なトレ-ルが続く、遊歩道というネーミングがぴったりの優しい森の小径になった。しかも、この千手ヶ原一帯は、日光輪王寺の寺領地でもあるため、開発の手がほとんど入らず、今日まで未開の秘境として、奥日光に残された貴重な山域となっているようだ。

日光男体山の秀麗な山姿を左手に眺めながら、千手ヶ浜を数分南進すると、仙人庵クリンソウ群生地に到着する。柳沢川の清麗な流れの川岸を中心に群生する、咲き始めたばかりの色とりどりのクリンソウを、近くで、あるいは遠目で、鑑賞した。この近くにマス養殖池があり、管理人が仙人庵に常駐し、鹿の食害防止ネットを設置するなど、普段からクリンソウ群生地を鹿の食害から守る活動をしていただいているとのこと。このご努力のおかげで、日本最大級のクリンソウ群生地が保護・維持管理され、毎年、変わらず見事な花を咲かせる数万本のクリンソウを、無料で鑑賞できるのはありがたい。

話は少し変わるが、赤沼常駐の日光自然保護センタ-の方が、「千手ヶ浜には、クリンソウ以外に、シウリザクラと呼ばれる珍しい桜が咲いているので、樹木の上方を見上げて、シウリサクラの花を見つけて、鑑賞してほしい。」との案内を受けた。キョロキョロ探してみたところ、円筒状に白色の小花を集積した、およそ桜のイメ-ジにほど遠い樹木を見つけた。念のためと、写真に収め、帰宅後にネットで調べてみたところ、この花がまさしくシウリサクラだった(掲載写真参照)。千島や北海道・東北北部から中部山岳の一部にのみ自生する寒冷地に咲く桜だという。これまで、北海道、東北地方や中部山岳で、目にした記憶がない、初見参のおよそ桜に似つかわしくないサクラを目にし、少々驚きだった。

帰路に就く前、光徳牧場に立ち寄り、絶品と評判の牧場自家製アイスクリ-ムを味わい、鮮やかな朱色の花を満載したヤマツツジや裏庭に群生するクリンソウ、咲き始めたズミの花等を鑑賞し、最後に竜頭の滝上部から、滝に沿って作られた階段状の遊歩道を下りながら、勇壮に流れ落ちる水流や、岸辺に咲く、トウゴクミツバツツジやシロヤシオツツジ、ヤマツツジ、オオカメノキの白花等の初夏の花々を愛で、今回の山旅を終了した。

ちなみに、今回の5年越しの奥日光の秘境千手ヶ原ハイキングは約5kmの行程を、行動時間約4.5時間、歩行数約15,000歩の実績を残して終了した。

豊かな自然が残る小田代原~千手ヶ原一帯の環境劣化を防ぐため、赤沼から千手ヶ浜までの約10km間を環境対応のシャトルバスが、4~11月間運行されており、西ノ湖入口までこのシャトルバスを利用して、入山した。
西ノ湖へは、バスを降りてから中禅寺湖西岸に流れ込む2本の川「外山沢川と柳沢川」を渡り、森の中を30分歩くと到着。柳沢川に架かる吊橋の上で、メンバ9名全員集合写真。下界では味わえない新緑と清流と濃いマイナスイオンに満悦。
周囲1.5kmの小さな秘境の湖「西ノ湖」東岸のミズナラの木陰に陣取って、大自然に浸りながら約1時間のランチタイムを楽しんだ。
西ノ湖のシンボルツリ-ミズナラの巨木「千手楢」。幹回り6m/樹高21mで樹齢不明。千手ヶ浜のハルニエ(幹回り6.4m/樹高25m)と日光湯元のカツラ(幹回り4.8m/樹高16m)とともに、奥日光の3巨木と称されているという。
西ノ湖から千手ヶ浜クリンソウ群生地まで、広大な千手ヶ原原生林内の千手の森遊歩道を約1時間歩く。木漏れ日射すカラマツ・ミズナラ・ハルニレ・オオイタヤメイゲツを主体とする混林の新緑が美しい。鹿、猿、熊には出会わなかった。
中禅寺湖西岸「千手ヶ浜」に流れ込む「柳沢川」清流の両岸を中心に数万株の色とりどりのクリンソウが咲き始めた「仙人庵クリンソウ群生地」。近くにマスの養殖池があり、群生地は鹿の食害防止ネットに守られ、毎年見事な花を咲かせる。
帰路に就く前、光徳牧場に立ち寄り、名物の牧場手作りのアイスクリ-ムをおいしく頂く。咲始めたズミやヤマツツジ、シロヤシオが美しい。右上の山は標高2077mの山王帽子山。
光徳牧場の裏手に広がるクリンソウ群生地。ほとんどが赤色の花だった。この群生地は、牧場敷地内にあるため、鹿の食害には、遭わないようだ。
竜頭の滝(幅10m/落差75m/長さ210m)中流部をダイナミックに流れ落ちる迫力満点の景観。滝上から滝下まで続く遊歩道を歩く。両岸に咲く花々と水飛沫を挙げて流れ下る水流を堪能。
竜頭の滝下の「竜頭之茶屋」入口で競演するレンゲツツジ、シロヤシオ、トウゴクミツバツツジ。シロヤシオとトウゴクミツバツツジは、すでに盛りを過ぎ、散り始めていた。

◆初夏の奥日光で出会った花々  (カッコ内の地名は今回目撃した場所)